ジャズ療法とは

 ジャズ、生みの親は統合失調症黒人演奏家バディ・ボールデン(コルネット奏者)1877~1931(54歳没)弦楽器中心だったラグタイムから金管楽器を主導にブルースを演奏したジャズの父といわれる人物。自由で、より即興に予測のつかない演奏スタイルを草案した。理不尽で不条理な黒人差別の渦中、アルコール依存に。23歳頃、統合失調症発症するも絶え間ない即興演奏スタイルで知られる。7年後精神病院に収監される。

ピタゴラス効果。音楽は宇宙にも存在すると考え、心を浄化すればその音楽も聴くことが可能で、音楽の調和で不調和を癒やす。
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アリストテレスのカタルシス効果。過激な音楽により、興奮が鎮められる。米国・精神科医アルトシューラーは「同質の原理」と呼ぶ。
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ジャズ療法は「美」と「醜」を超克した芸術の結実である。

ジャズ演奏家の病跡学

アメリカ精神医学会「精神病理と創造性研究」による1945~1960年代活躍した著名なモダンジャズ演奏家40人を分析結果、有能なジャズミュージシャンの精神障碍発症率が高いと結論。以下一部紹介する。

【統合失調症】
バド・パウエル(ピアニスト)
マイルス・ディビス(トランペット)
【強迫性不安障碍】
ジョン・コルトレーン(テナーサックス)
【鬱病】
ビル・エバンス(ピアニスト)

自由連想と即興演奏

1950年代以降「抑圧からの解放」といったフロイト以来の自由連想法とジャズの即興演奏(インプロビゼーション)の共通項に多くの研究論文が発表されるも、わが国での翻訳書は皆無である。
ドイツではインプロビゼーションが、統合失調症、鬱病、自閉症に治療効果が認められている。ジャズの演奏構造には精神病理を昇華するカタルシス効果があり、囚われている精神を解放する。

ジャズより他に神は無し


 ニーチェは神は死んだと叫び、ベルグソンは各人の生命の躍動感を説いた。ジャズ評論家・故 平岡正明は「ジャズより他に神は無し」と自著に表題を付し、ジャズのスピリットによる人間変革と社会変革をテーゼとした。故 相倉久人・ジャズ評論家は「ジャズの表現構造及び活性化理論」を打ち立て、不動の体系化を構築した。

 エンカウンターやオープンダイアローグが再び注目されている。患者が蚊帳の外に置かれ治療方針が決定づけられてきた従来型に警鐘を鳴らす意義は大きい。だが、情動に支配されている当事者と支援者のリレーションシップは円滑に行われるだろうか?「精神療法という音楽」の著者であり、ジャズミュージシャンと精神科医の顔をもつスティーブン・H・ノブロックはいう。言語というものは、いかに簡単なものでも、その中に音楽を含まずに存在し得ないと。
 音楽が言葉に確固たる表現形を与える。というインドの音楽家カーンの箴言を用いつつ、抑鬱状態にある人や統合失調症者、自閉症患者は支援者との会話のリズムが一致しないと言う。ケースワーカーや援助者、医師等に非言語的コミュニケーションの訓練が求められる。ジャズの表現構造は治療の行き詰まりから救ってくれたと語る。グリッサンドやビブラートが散りばめられている原始的メロディーには柔軟性の質があり、不明瞭な音に寄って隠された認知度がもたらされる。ジャズの中での音楽の即興演奏の経験により、成人の治療が有用になる。

 ジャズピアニスト・セロニアスモンクは「リスナーの予想を裏切るような予想外の変更や方向転換をつかって、その感情のインパクトを再活性化させ、特定の音が音楽の作曲やジャズの伴奏で起きるハーモニーやリズムの動きから情動的意味や影響力を得る」と語る。
 プロセスの形成(ボリューム、トーン、テンポ、リズム、掛け合い)を観察することで推察できる。感情、快楽、覚醒、動機の譜面を含んでいる。
悲言語的構造への注意がいかに行き詰まりから私達を救ってくれた。

 人間の身体ほど優れた生きた反響版は存在しない。それぞれの原子が鳴り響くので、音が身体の全原子に影響を与える。腺、血液循環のすべてに音は影響を与える。音の物理的な効果は人間の身体に大きな影響を与える。筋肉、神経のメカニズム全体的が、すべてビブラートの力によって動かされる。
人間の身体の全メカニズムは脈拍、心臓、脳波、血流。飢や乾きもリズムをとっている。リズムが狂うことを病気という。

 今日、ジャズは音楽の領域を超え、人々の感性と悟性を純化するアイテムとなった。多くのチェーン店のコーヒーハウスでバックグラウンドにジャズが流れ、心地よい空間をつくっている。かって、人々が耳を塞いだ音楽、ジャズは日常に流れている。混沌とした時代、心の無意識層がジャズを求めている証左である。
 苦悩を抱えている当事者、支援者は積極的にジャズ鑑賞が求められる。毎日、三時間ジャズとの対座を望みたい。一年後、当事者は快癒に気づき、支援者は当事者とのセッションで意志の疎通に実感を得るだろう。
 支援者や家族、医師等にお勧めの最初のジャズアルバムは魂の殉教者といわれる、ジョンコルトレーンの「至上の愛」を傾聴して頂きたい。

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