筆者は、縄文ジャズ療法研究所を主宰しております。
縄文文化とジャズを結びつけること事態不思議に思う方も多いと思う。
叉、縄文人をマンガ「ギャートルズ」の石器時代人と同一視する方も多いようである。
縄文人は、縄文土器の発明。定住化。自然との共生で狩猟・採集・漁労活動を行い。植生の栽培の痕跡も確認されている。
人々との共助は小児麻痺(ポリオウイルス説も)の子供が成人し、周囲に認められた証の抜歯跡(通過儀礼)等からも共生社会の構成員として認知された証。丁重に埋葬された痕跡の遺構もあり、開かれたコミュニケーション、共生・共助社会を実感するものである。
一般的には音楽療法は音楽療法士がクライアントに音楽的手助けをサポートする事によって、精神的、身体的回復を寄り添うケアーで「能動的音楽療法」を指す。
当研究所では「ジャズ」を用いる。モーツァルト効果のように頭脳明晰にする効果はありませんが、(モーツァルト効果の真意も定かではありませんが・・・)
苦悩からの解放をジャズ鑑賞で感性と悟性の純化が可能と考える。アメリカ草創期のジャズ演奏家を含め、想像を絶する黒人差別の渦中、苦悩の日々にあり、自ら命を絶つ者、麻薬や酒に溺れる日々、ジャズ表現によって苦悩と闘ってきました。精神疾患のジャズ演奏家も多く、演奏仲間との音楽でのコミュニケーションで、泥沼で蓮が花開くように演奏で昇華させた。ジャズは自分に打ち勝った証の結実です。苦悩に拘泥している方にジャズ鑑賞は生きるエネルギーになると思う。米国・精神科医アルトシューラーの主張した「同質の原理」である。
ジャズ演奏はインプロビゼーションの音楽で、即興演奏であり、一握りのミュージシャンしかジャズ演奏は不可能と考える。
例え、ジャズミュージシャンが仮に音楽療法士になったとしても、サポート受けるクライアント自体ジャズ演奏に応える事は不可能と考える。
そこで、当研究所ではドイツ・シュヴァーべのRMT(受動的音楽療法)技法を取り入れたジャズ版を行っており、「能動的音楽療法」に対し、ジャズ鑑賞を用いた受動的音楽療法という。
当研究所では、ジャズ界の求道者ジョンコルトレーンCDを用いる。
一流ジャズ演奏家は五感と知覚力が秀でた才能を持ち合わせた選ばれた人たちである。
ジャズ演奏はコード進行さえ細分化し、他のパーソネルとの音の会話で創造する音楽であり、オープンダイアローグといってよい。
ジョンコルトレーンは黒人差別の渦中、想像を絶する理不尽で不条理な日常、麻薬と酒に溺れた日々でしたが、病院に受診することなく、ジャズ演奏でパーソネルとの開かれた音による対話で病を克服した。
ジャズの創始者の一人ルイアームストロングは、濁声でスキャットによる音合わせした。文字化できない言葉による、意思伝達だ。言葉以前にスキャットが伝達手段だった。
音楽家・武満徹が語ったように、ジャズは人々の呻きであり、祈りである。
鳥の囀りは人間に理解できないだけで、鳥たちも求愛の他に、鷹等危機が感じるときの囀りや多種類使い分けており、人間にはやがて言葉が生まれ、文字が誕生した。それでもジャズ演奏家たちは情動をぶつけ合いました。ヴロー(呼吸)と言います。
ジャズでは管楽器以外のピアノ等演奏も、ヴローするという。
ジャズ演奏は常に、集中力と全能を用いる。
更に、パーソネルの意図的逸脱をも創造に変えていき、パーソネルのミステークも創造に結びつける。
本稿のタイトル「縄文人はジャズってた」の縄文人も研ぎ澄まされた五感と認知力で、自然災害や狩猟・採集・漁労活動での逸脱をも創造し縄文文化を拓いてきた。
縄文時代早期7300年前の鹿児島鬼界カルデラ噴火では上野原集落は壊滅。森林は破壊され、回復には200年かかったといわれている。火山灰で猪等も死滅。エビやカニなど底生物も死滅。1000年間無人になったといわれている。火山灰は東北まで飛び散ったとの考古学の解析もされている。
6000年前には縄文海進で日本列島広い範囲で陸地が海底に沈み、
海退後も塩害で植生は死滅した。
自然界の猛威や、熊や猪等の危害性、動植物の毒物や危険性を見分け収穫に結び付ける文化力、創造に変えるスピリット、仲間とのコミュニケーション能力。
黒曜石は硝子質の性質を学び、鏃の他、ナイフとして解体や調理に活用した。
ジャズ演奏家がチャーリーパーカー等先達の手法を継承しつつ独自に創造するように、縄文人も、石器時代の先人たちに学びつつ独自に創造開発してきた。
大きな縄文人の功績は粘土が火力で化学変化する発見であり、縄文土器の発明だ。
縄文人はジャズという音楽は創造できませんでしたが、造形で表現し、生き方そのものがジャズ演奏といってよい。
土器のグラデーションには意匠が託されており、文字言葉以前の意味が散りばめられている。「火炎土器」は多くの蛇が天に向かう生命力を表現している。
哲学者、梅原猛曰わく縄文土器は黒人ジャズだと述べ、「共通の雰囲気をもつが同一作品はない」と。
土器の発明は、石器時代の移動生活から定住に変わってきた。土器に食物の貯蔵や煮炊きすることで、食の安全性が確保されるようになった。
uナイサー(心理学者)の「知覚循環」を元にジャズ演奏家と縄文人の共通項を考察したいと思う。
uナイサーは、知覚を認知と現実世界が出会う重要な接点と捉えた。
知覚とは目、耳、鼻、舌、皮膚の五感を司る感覚器官から直接的に情報を摂取する過程である。ウェルトハイマーが創始したゲシュタルト心理学が発展の原動力になっている。
※ゲシュタルト心理学は「ルビンの壺」で知られるように、視覚の錯覚「ゲシュタルト崩壊」から検証された。
ウェルトハイマーは構成要素に還元することでは理解不可能な「仮現運動」や「プレグナンッの法則」を構成主義の反証として提言。私たちもパラパラ漫画やアニメを例に理解可能と思う。
音楽のメロディーやリズムは構成要素の音階を取り出して調べても、メロディーやリズムの流麗さを理解するには構成要素の音の集合であるゲシュタルト(全体性)を知覚して味あう必要がある。
ウェルトハイマーは、人間が「対象の位置と特徴」を的確に知覚(認知)する為には身体認知と空間認知、環境知覚情報を得るための「認知地図」が必要になってくるという。
大自然を活動の舞台とする縄文人は、狩猟・採集・漁労活動での春夏秋冬、極変する山や川、海等での環境変化を察知する感覚、知覚の「認知地図」の感受性全能力が求められる。
縄文人は、日常での狩猟や採集は集落の外側「ハラ」という自然環境で行う。(人工的ノラ仕事の反語)慣れ親しんだ環境とはいえ、油断禁物で、五感と認知力を集中させなければならない。狩猟対象は猪と鹿が中心だが、地方によっては熊が出没の事もある。特に、どんぐりが不作の冬眠前や冬眠開けの仔熊と一緒の時は特に危険だ。
縄文人は、罠や落とし穴を用いることも多い。鹿対策は下り階段に追い込む罠が有効で、滑落してしまう。
秋の落葉後の落とし穴は、見分けが難しく、狩猟犬に獲物を追わせる後を武器を手に追いかける最中、経験の浅い者は集落の誰かが作った落とし穴に嵌まってしまう危険性もある。アクシデントだ。落とし穴によっては、底から鏃を天に向け刺してあることもあり、命に関わる。
多摩丘陵一帯からは約一万の落とし穴が発見されている。
縄文時代、犬は狩猟の助っ人で、家族の一員であり、住居内に埋葬跡も確認されている。
弥生時代、犬は食用で、集落跡に犬の骨が散乱しているという。
採集活動は、女性が中心となって行っていたようだが、山菜採りの収穫期、春~夏、危険なのはスズメバチの大群だ。オタマジャクシや蛙が多くなる4月~11月頃危険なのは毒蛇だ。マムシ以上の猛毒がヤマカガシの毒性で、噛まれた数時間後~一日程度で血栓を作り、死に至る。
虫類は毒性は弱いが、マダニ、ムカデ、ブヨ、ヒル等により、化膿やアナフラキシーショックになる可能性もある。
子供たちは、大人たちからたしなめされ、ヒヤリハット体験の中から危機意識を学び記憶力に留める。
代表的空間認知地図を上げたい。エッジ(縁)は場所の連続を遮る川や海、海岸、崖等の行き止まりを指す。ディストリクト(地域)は広大な広場や空間を指す。ノード(結束点)は相互を結ぶ交差点など。「空間認知力」は強力な五感と知覚力との相互循環で危機を乗り越え、創造に繋げる。
自然災害や動植物の危害等、予知能力が求められる。周囲の風や微細な音、匂いなどで状況判断する。暴風雨の前兆や雪崩、土石流等、環境変化に獣や害虫の出没も様変わりする。さらには四季による雲の変化や流れ、集落から立ち上る煙の方向や流れにより、天候や寒暖を予知する。
漁労活動では濁流やしけ等、海流変化の危険性と背中合わせである。更には、地産物を丸木舟を使い目的地への移動も、土地勘のない見知らぬ地方への出向きは「空間認知力」やイメージアップ認知力が不可避である。
コンパスも海図も無い時代、北斗七星頼みの踏破である。
縄文時代最も必要な加工資源「黒曜石」は長野県和田峠や神津島産の物が何百キロメートルもの広い範囲での流通が全国各地に行き渡り、確認されている。更に、海等、海産物に恵まれない地域には、魚の干し物や塩漬け等供給する。「物々交換」ではないギブ・ギブである。縄文人にとって、相手方が喜んでくれることが至福だ。
五感の他に、平衡感覚、固有受容感覚、侵害受容感覚、熱受容感覚等ある。
感覚は物理的プロセス、知覚は心理的プロセスである。
周囲の環境について情報を得るために、感覚系に依拠している。
縄文人は、この感覚情報を使って環境を切り抜けたり、相互作用することで、食糧を見つけたり住処造りをしたり、社会的関係を維持し、潜在的に危険な状況を回避ししてきたのだ。
長期記憶力と五感的情報から抽出された概念的記憶が形成される。
短期記憶は、情報を再び意識の重点に連れ戻す内的反復を行う。この内的反復が行われない場合意識から消えていく。内的反復が意識的に行われたとき、叉、衝撃的や新奇であるとき、その情報が長期記憶に受け渡され、すでに形成されている類似した記憶に追加されたり、修正を加えられたりして、長期記憶の一部となることがある。この長期記憶と短期記憶との間には常に相互交換がある。
ジャズ演奏における創造的認知システムにおいては、ゲシュタルト的な力が大きな位置を占める。最も基本的な能力は近接するもの類似するものを極限まで区別する力である。ジャズ演奏においては知覚情報と認知の両者は不可分な関係にある。演奏では音楽の生成プロセスと、解釈、評価プロセスの両方に作用している。
ジャズ演奏では、演奏された音楽を聴取し、複雑な要素を区別し、グルービングし、解釈しながら直ぐつぎの生成に繋げる。このサイクルが常に繰り返される。その結果全体として意味のある表現が構成されていく。
縄文人の日常も同様で、情報処理と聞き取りという作業を同時におこなうわけで、強い集中力を必要とする全能的作業といえる。
「内的反復力」の活性度合いはゲシュタルト的な感受能力の鍛錬や経験値の蓄積による。
更に、新たな創造はゲシュタルト的感受能力の鍛錬が求められ、高度に構成的な認知プロセスが発動される。
音楽学者、哲学者、Lメイヤーは「音楽における意味は「逸脱」によって生じ、蓋然性が逸脱によって妨げられたときに文脈や状況を超越して、音楽の非指示的な意味が成起する」とする。縄文人の日常も偶発的逸脱の日々と思われる。
Lメイヤーは逸脱類型として三点を上げた。
①予測される現象の遅延
②多義的可能性や曖昧さの現象
③事後予測不可能な状態
ドイツ・現代音楽作曲家/シュトックハウゼンは言う。
「意外性の契機が最も強いとき」とは「逸脱」の生起するときに他ならない。人々の「感動」を喚起するプロセスに他ならない。
縄文人も、危機を創造に結びつけた収穫の際は「感動」を集落全員と共に、「動植物」の命に「頂きます」と生命の循環に感謝と、アイヌの「熊送り」同様に神への転身を祈り、祭祀を行う。
「火炎土器」に代表される、装飾を施された、日常使用の土器とは別の土器や「縄文の女神」や「縄文のビーナス」等、意匠を託されたの土偶を祭壇に囲み、縄文太鼓や土笛を用い、歌い、舞い踊り、非日常のハレの日を祝う祝祭空間だ。
ジャズの野外フェスティバルの感動の後のフィナーレにも近似する。
ジャズ演奏家は意図的に逸脱行為をするときがある。
新主流派の帝王といわれたマイルスデービスは、他の演奏家との協調から繰り返される精確には割り切れない拍動、偶発的でありなから必然性を感じさせうる逸脱の微妙なタイミングなどを意図的に行い、メンバーに創造力を鼓舞する。故に、マイルスの複雑に織りなされる音響情報の全てを模倣することは不可能である。
以下はハービー・ハンコック(P)が、マイルスとのセッションでコードミスした体験を語る。マイルスはメンバーの逸脱をも創造に変えていく。
https://youtu.be/cxAUSvwyrOY
同様、縄文人の日常も自然災害等、ジャズ演奏家の意図的逸脱とは違い、偶然的逸脱の日々と察せられる。縄文人も個人的鍛錬はもとより、一方では、既存の技巧や知識を踏まえながら、その実績に絶えず疑問を持ち、試行と修正を繰り返す作業「確認」プロセスであり、逸脱と追認を繰り返す認知的な交渉にもとづく構成的手法であり、縄文人は、ジャズ演奏の表現構造を楽器を使わず日常活動で実践してきたといえよう。
故に「縄文人はジャズってた」との結論に結びつく。
金子好伸
メンタル心理カウンセラーⓇ
国際縄文学協会会員/日本音楽療法学会会員
日本ジャズ普及協会賛助会員
聴きジャズマイスター
人生に苦悶していた15~16歳頃、偶然ラジオから流れてきた初めて耳にしたジョンコルトレーンジャズに衝撃を覚え、当時、川崎にあったジャズ喫茶「オレオ」に自転車で日参した。一年通ううちに生きる希望が湧いてきた。「この音楽は何なんだ!」公民権運動の渦中にあった黒人関連の本やジャズ評論を読み漁り、ジャズが理不尽で不条理からの昇華の芸術と確信した。ジャズは六根を清浄する実感を体験し、絶望や悩乱からの解放となった。
利き酒ならぬ「聴きジャズ」歴六十年。
20代後半、「日本ユングクラブ」に所属。当時会長だった上智大学トーマス・インモース教授にゼミに誘われ、約2年余りユング心理学を深める。
2019年脳梗塞・高次脳機能障害発症後、後期高齢者直前74歳で、自宅受験のJADP認定メンタル心理カウンセラー取得。脳梗塞後遺症で記憶力や理解力が衰えている上、歩行障害の老齢期にも学びと受験の機会を設けて頂いた日本能力開発推進協会(JADP)理事長大友達也先生(就実大学教授)に感謝致します。
精神科医G・Mさん(東京都)は医学生時代、カウンセリング理論を学ぶ機会が少なかったというG・Mさんは、民間認定JADP認定メンタル心理カウンセラー資格で、公認心理師や認定心理士、臨床心理士中心の「大学・学生相談室」に採用さ活躍れております。(「ホンネの音」より)民間認定の認知力も広められております。
私は、横浜市公的施設ケアプラザで月一回ジャズによるオープンダイアローグ開催しております。精神疾患の方へのサポートは顧問役の精神科医の先生と協同しております。